折戸を閉じると漆黒の直方体になり、置かれた部屋で過ごすことに影響を与えるほど強い存在感を持たないことを意図している。しかし軽い存在ではなく、漆黒に塗られた直方体は確かな祈りの対象として控えていることも、仏壇を求める心情としてあるのではないか。そう考えてボリュームや部材の厚さなどを検討した。
直方体の表にウォルナットで作った一本のラインを走らせ、ボリュームを分割し量塊感を軽くすると同時に、この無垢木のラインは仏壇を展開した際には戸板を支える脚になる。表の塗面に傷が付くのを防ぐと同時に、奥行き300mmの棚の上でも設置可能とした。15mmの厚い折戸を開くと戸板がそのまま祈りの場を作る壇となり、高さ175mmまでの本尊と位牌が入る内部が現れる。昨今の需要から骨壺などが入る小さなウォルナットの房を付け、その存在を示す開口部を設けると同時に、写真立てとしても機能するようにした。房の天部には彫刻と蒔絵で散り蓮華を施し、浄土を暗示している。